8人が本棚に入れています
本棚に追加
それから僕らは、そらを見た。
中村翔は、器用に拳銃をくるくる回しながら、十字路の少し手前にしゃがんでいた。
「A・B・C、どの班もサポート準備・バリア設置完了しました」
耳に付けていたインカムから、彼が指揮を執っているモンスターハンターズの各班リーダーの声が聞こえてきた。
「了解。各班、そのまま待機で」
「はい!!」
翔はインカムに向かって指示しながら、目の前で暴走している”モンスター”と呼ばれている存在を見た。最近、モンスターは多く出没していてリーダーである翔は家に帰る時間がほとんど無かった。
「…想良、大丈夫かな…」
翔は、家族で唯一の相談相手である弟の想良のことをいつも心配している。
「また想良くんの心配か?根っからのブラコンだな、翔」
想良のことを考えていた翔にある人が声をかけてきた。
「…お前に弟いないから、わからないかもしれないけど、弟って意外と憎たらしいところもあるんだぞ」
翔が後ろを向いて言った相手は、翔の幼なじみであり今の仕事の相棒でもある浅葉光太だった。
「はいはい。…お前って想良くんのこと考えること以外はリーダーに合ってるんだけどなぁ」
「俺にとって、あいつは唯一の兄弟だから…」
翔は、すっと立ち上がって言った。
「…そうか」
もう余計なことは言わないと決めた光太はモンスターのほうへと視線を変えた。モンスターには、もう人間の面影は何一つ残っていなかった。
「…よし、行きますか」
翔は回すのをやめていた拳銃を再び回し始め、歩き出した。
「あぁ」
光太も翔の後を追った。
最初のコメントを投稿しよう!