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「おい、翔。お前のこと殴ってもいいか?」
警察署で突然、翔の隣の席に座っていた光太がそう言った。
「は?何、いきなり」
翔は驚きすぎて、飲みかけていた水筒のお茶を吹き出しそうになった。
「おぉい。書類がだめになったら、俺が課長になんて言われるかわかってんのか!?」
翔と光太と同じ刑事課で二人の上司でもある木村健司が、向かいの席から睨んできた。彼はモンスターハンターズではなく、普通の刑事として働いている。普段は翔と光太も刑事として働いている。その刑事課で、怒らせると一番怖いとされているのが健司なのだ。
「す、すいません…」
「気をつけろよ」
翔と光太が謝ると、健司は呆れるように言い放ってどこかへ行ってしまった。
「……で、なんで殴りたいんだ?」
翔は、健司が部屋を出たのを確認して胸をなで下ろしながら光太のほうを見た。
「だって、最近お前にばっかりに取材来たり、中高生の間で話題になったりしてるだろ?それが気に食わないんだよなぁ。まぁ、正直言ってお前には敵わないって気づいてんだけどさ」
「前は、光太にも取材したいって来てたよな。っていうか、取材とか勘弁してほしいんだけど…」
「そういや、お前取材NGなんだっけ。テレビとか出ればいいのに…」
光太が諦めるように翔に言うと、翔は少し暗い表情になった。
「……想良には、俺がモンスターハンターズのリーダーだってこと秘密にしてるからさ。取材受けたら、あいつにも知られるだろ」
「...は?お前、想良くんにモンスターハンターズのリーダーやってること隠してんのかよ!?え、え、なんで?」
光太は、翔が想良にモンスターハンターズのリーダーをしていることを言っていると思っていたから、とても驚いた。
「…あいつにはモンスターと無縁でいてほしいんだ。それに、心配かけたくない」
「モンスターと無縁か…。でも、それはもう無理なんじゃねえの。想良くんは今、高校生だろ?さっきも言ったけど、中高生でもモンスターを見るようになったし話題にもしてる。モンスターって言葉は、今の時代どこでも耳にするんだよ」
「わかってる。でも、そう願わずにはいられないんだよ」
翔がそう言い終えるとほぼ同時に、部屋中に事件を知らせるチャイムが鳴り響いた。
「俺は、本当は…」
席を立ちながら翔は、光太に聞こえないくらいの声で呟いていた。
「ん?何か言ったか?」
「いや、なんにも。行くぞ」
反応した光太に知らないふりをして、翔は部屋を出た。
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