2.Draw

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 自分にもっと権力があれば理不尽な命令に従わずに済んだ――ふたりきりのとき悔しさをにじませたレキシアの胸の内は、わずかでも傷ついていたに違いない。  バルツァーに将官以上の者を代理とするよう条件がつけられ、ネスラーは僕を選んだ。  何十人といる将官の中で一番若い僕が代理なら、不平不満は出ないとの考えなのだろう。 「決まったものは仕方ないし、この際、動ける範囲で偵察してこようと思ってるんだ。考えようによっては得るものが多いかも」  みんなの負担になりたくなくて、わざと自分を奮い立たせるようなことを言ってみる。実際は敵地で過ごす自分の姿なんて、まったく想像できなかった。 「ミハ前向きだなぁ、健気過ぎ」 「エリック、公の場でミハエル殿を呼び捨てにしたりしてないでしょうね」 「えーたぶん」  階級が違えば敬語は必須だ。ただ、パイロット仲間の気安さもあって、エリックには敬語を求めていない。
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