2.Draw

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「だからって……おれたちの大事なミハエルが敵方に渡っちまうんですよ! 守ってやらなきゃ」 「わかってるんだよ、そんなことは!」  たまりかねたようにレキシアが声を荒げた。一瞬場が静まり返り、僕は固唾をのんだ。  エリックが納得のいかない顔で、ラウルは沈黙を守り成り行きを見守っている。 「やめようよ、僕のことで言い争わないで。エリックの気持ちはありがたく受け取っておくよ。ラウルとドレッドノートに残って、レキを補佐してもらわなきゃ困る。ね?」  レキシアには上官としての立場が、エリックには友人としての言い分があるのは痛いほどわかる。僕のせいでふたりの和が乱れてしまうのは、とても悲しいことだった。 「エリック、我々は軍人です。従うしかないのです。命令なのですから」  ラウルに諭され、エリックは悔しそうに両手で髪をぐしゃぐしゃかきまぜた。 「ああもう……かしこまり」  投げやりに答え、エリックが不機嫌な足取りで指令室を出て行く。 「待ってよ、エリック」 「ミハエル、放っておけ」  立ち上がった僕をレキシアが制した。
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