2.Draw

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 僕はエリックより年下だけど、心配いらないのに。逆に上官として頼りなく思わせてしまう自分が情けない。 「きちんと務めを果たしてくる。心配しないで」 「任務遂行能力は完璧だって言ったろ? 不安なのは付随して起こる突発的な摩擦だよ」  摩擦は僕に限らず、誰にでも起こる不可避なものだ。人と人が交わる場には必ず生じる。 「無事を祈るしかないってのが、歯がゆいよ」 「ひと月後には帰って来れるんだよ。あっという間だよ」  僕は楽観的に言った。  負の材料なんていくらでも思いつくけれど、いまは考えないようにしてる。 「エリックが機嫌直してくれて良かった。じゃ、また後でね」  わざとらしくない程度に明るく振舞って、僕は上りのオートウォークに飛び乗った。落ち着かず、無意識に走り出していた。  ドレッドノートを離れる時も、平常心でいられるだろうか……。
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