2.Draw

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「僕さ、レキに出会えて良かったよ」 「……何を今さら」  レキシアは窓の外に向けていた視線を室内に戻し、訝しげに僕を見た。 「レキは優等生だったよね」 「おまえだって卒業年度には首席だったろ」 「同じ艦に乗りたくて頑張ったんだよ」  僕とレキシアは同じ士官学校出身で、出会いは十年前に遡る。  女手ひとつで育ててくれた母が十歳の時に亡くなり、その後、紆余曲折を経て、十一歳で孤児院に引き取られた。  士官学校を知ったのはちょうどその頃だ。孤児支援の奨学金制度があり、卒業後軍務につけば五年分の授業料返還義務はない。  院長先生の勧めで入学を決意した。愛国心は欠片もなかった。いずれ孤児院にいられなくなる。ただ生きるために選んだ道だった。
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