2.Draw

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2.Draw

 僕の属する第一宙域中央政府軍――通称プライマリと、ケルサス星系連邦軍は敵対し、国家は戦争の只中だ。    戦場は宇宙空間、終わりの見えない戦いが半世紀続いている。  第十艦隊旗艦、ドレッドノートの格納庫へ着艦した僕とエリックは、フライトスーツのまま艦橋へ向かった。 「ミハって戦闘艇乗ってるとき冷たいよな」 「普通だよ。エリックがしゃべりすぎなの。私語禁止だってわかってる?」  エリックはアクセサリー多用で見た目が派手な反面、真面目で気さく。エースの称号は僕とエリックの間でいったりきたりしている。  可動式歩道(オートウォーク)を降り、扉の虹彩認証に瞳をかざした。はねた金色の髪が画面に映った。ヘルメットを脱いだあとはいつもこうだ。  指先で軽く直し艦橋へ入ると、張りつめた独特の空気に押し包まれた。  副官のラウルが僕に気づき敬礼する。紺色の長髪をひとつにまとめ、薄緑の瞳はいつも冷静に物事を見ている。エリックとはいとこ同士、ふたりとも年上の部下だ。 「お待ちしておりました、ミハエル殿」 「ラウル、急な作戦変更だね。何があったの」  小声で問うと、ケルサス軍から緊急通信が入ったとのことだった。艦隊を束ねる総旗艦への入電ならまだしも、旗下のドレッドノートに何の用だろう。
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