3.Past and future

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 レキシアと初めて言葉を交わしたのは、入学から半年以上経った剣戟の授業だった。学年対抗トーナメントの決勝戦で、レキシアと当たった。  剣戟は数少ない得意科目だったけど、レキシアも勝ち上がってきた分、あなどれない。さあ、どうやったら勝てるだろうか。 『女の子みたいに華奢だな』  僕を評するレキシアのなにげないひと言が闘志に火をつけた。  対戦開始のホイッスルが鳴ると同時に斬り込んだ。  二度、三度とお互いの剣が空を切る。  連戦の疲れか、レキシアの動きが一瞬にぶった。  僕はそれを見逃さず、間合いをつめ足払いをかけた。  体勢を崩したレキシアが立ち上がる寸前、僕は喉元に切っ先を突きつけた。 * 「あれは完敗だった」  レキシアがふっと笑い、「それに」とつけ加えた。 「おまえ、しばらく俺のこと避けてただろ。話しかけてもしばらく無視されたもんな」 「避けてたっていうか……どんな風に接したらいいかわからなかったんだよ」  文武両道で人望もあるレキシアと劣等生に共通点はない。気後れした最大の理由は、僕の意識の低さだ。  本気で軍人を目指す覚悟など、僕にはなかった。卒業さえすれば何とかなる。その程度だった。レキシアとの隔たりは、天と地ほどの差があった。
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