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【ミハエルSide】
マリーとクレアが夕食に出かけたあと入浴を済ませた。ドライヤーで髪を乾かしながら、肖像画のことを思い出す。
母さまの隣に描かれた金褐色の髪の男性――レオノールの面差しからは、芯が強く知的な人柄が感じられた。
鏡の中の僕は、髪の色も瞳の色も母さま譲り。背格好はレオノールに似てなくもないけど、初めて知った父の存在に対して、感慨より戸惑いのほうが大きい。
王子である事実も、足の裏の紋章もすべて消して、なかったことにしてしまいたい……無意識にため息がこぼれる。
「ミハエル様、おくつろぎのところ恐縮です」
髪を乾かし終えたとき、ちょうどアニエスが部屋に訪ねてきた。僕はガウンを羽織り広間に顔を出した。
「殿下がお呼びなのですが、私室までご足労願えますか」
「もちろん。カイの様子はどう?」
「だいぶ回復いたしました。ミハエル様こそ、大丈夫ですか」
「……冴えない顔してる?」
「精神的な負担が大きいのではとお察しします」
バルツァーやカイの命令に添って動くかたわら、僕の面倒を見ているアニエスも相当疲れてるはずだ。
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