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前合わせの白い夜着姿のカイは天蓋ベッドに上半身を起こし、ルビー色のサングリアを飲んでいた。スライスした果物が入ったフレーバードワインだ。お酒飲んでて平気なのかな。
「遅ぇぞ、ミハエル」
「お風呂に入ってたんだよ」
「オレに抱かれるために?」
「あのね、その手の冗談はもういいから」
「オレはいつでも半分本気だ」
「それを冗談って言うんだよ」
カイは口の端を上げ、「靴を脱いでそこに座れ」とベッドサイドの椅子を指さした。アンティークな一人掛け用のラウンドチェアだ。
「靴脱がなきゃだめなの?」
「だめ」
なにかの儀式? 言われるがまま裸足になり腰を下ろすと、カイが腕を伸ばし僕の足首を掴んで引き上げた。
「わ!」
「殿下、なにを――」
「……やっぱりあんのか」
僕の足の裏を見てカイが眉をひそめた。
まさか紋章のこと? こんな不意打ちの確認の仕方ってある?
「やめてよ、失礼だな!」
「風呂上りなら浮き出てるかと思ってさ」
悪びれもせず僕の足から手を離したカイは、掛け布団をめくり、「見ろよ」と右足を僕に向けた。土踏まず部分に、鷲の紋章が刻まれている。
決定的な王族の証を目の当たりにして、少なからずうろたえた。僕と同じ印だった、まぎれもなく。
カイも僕もイグニス王家の血を引く王子なのだと再認識させられて、苦い気持ちになる。
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