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「殿下、ミハエル様に乱暴な真似はおやめください」
すかさずアニエスが注意したけれど、カイは少しも気にしてない。
「僕の足の裏を確認するために呼んだの」
ふてくされ気味の僕にカイは「なわけねえだろ」とつっけんどんに返す。
「だったらなに? それより体調はどうなの」
「お陰様で絶好調」
「お酒が飲めるくらいだものね。回復が早くて安心したよ」
ほっと息をつき椅子に座り直すと、アニエスがサングリアを注いでくれた。スパイスの効いたフルーティーな香りと甘みが絶妙で、飲みやすい。
「いいこと教えてやるよ。出発が確定したぞ」
「捕虜交換の……? ほんと? 本当に?」
またしても冗談だと困るから、後ろに控えるアニエスに確認する。
「つい先ほど決まりました」
良かった、本当だった。急にどうしたんだろう。僕よりエルンストのほうが内外的に有益だと考え直してくれたんだんだろうか。
なんにせよ、バルツァーの心変わりは大歓迎だ。胸のつかえがひと息に下りた。
「イグニス王と話し合ってくれたんだね。嬉しい。帰れるんだ」
「多分な」
「多分て?」
「あんた抜きで行く可能性もあるよなぁ」
意地悪く笑いながら、カイがグラスを傾ける。僕抜きの捕虜交換はあり得ない。
「僕はなにがなんでも艦に乗るよ」
「オレも乗る」
「カイも?」
驚く僕にカイは社会科見学の一環で、とつけ加えた。見学のためにわざわざラクリマ星域まで?
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