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「そうか、父君のお出迎えだね」
「違ぇよ馬鹿。なんでオレがくそ親父を迎えに行かなきゃなんねぇんだ」
「ミハエル様をお見送りしたいと素直におっしゃればいいのに」
「それも違ぇよ!」
そういえば、エルンストは身内からの心証が良くないんだ。実の息子にここまで疎まれる父親って……不憫だ。
「どうして仲が悪いの?」
「どうでもいいだろ。それよかミハエル、オレの艦に乗せてやるからありがたく思え」
「すごいね、カイ専用の艦があるんだ」
「婿入り道具のクルーザー。ガチガチの戦艦じゃねえから小さめだけど、格好いいんだ」
帰艦の目途が立って、じわじわと安堵が広がる。
僕たちがやり取りしてる傍らで、アニエスのリストフォンが鳴った。どうやら執事かららしい。用件を訊き通話を保留にしたアニエスが僕を呼んだ。
「ミハエル様、クレアの母親の容体が急変したようです。病院へ向かわせますので許可をいただけますか」
「もちろんだよ。早く行かせてあげて」
アニエスがクレアの外出許可と車の手配を執事に伝えた。大丈夫だろうか。なにごともなければいいけれど……クレアの心細そうな顔が浮かんで、心がざわついた。
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