9.Get down

20/27
前へ
/567ページ
次へ
「そうか、父君のお出迎えだね」 「違ぇよ馬鹿。なんでオレがくそ親父を迎えに行かなきゃなんねぇんだ」 「ミハエル様をお見送りしたいと素直におっしゃればいいのに」 「それも違ぇよ!」  そういえば、エルンストは身内からの心証が良くないんだ。実の息子にここまで疎まれる父親って……不憫だ。 「どうして仲が悪いの?」 「どうでもいいだろ。それよかミハエル、オレの艦(デイトナ)に乗せてやるからありがたく思え」 「すごいね、カイ専用の艦があるんだ」 「婿入り道具のクルーザー。ガチガチの戦艦じゃねえから小さめだけど、格好いいんだ」  帰艦の目途が立って、じわじわと安堵が広がる。  僕たちがやり取りしてる傍らで、アニエスのリストフォンが鳴った。どうやら執事かららしい。用件を訊き通話を保留にしたアニエスが僕を呼んだ。 「ミハエル様、クレアの母親の容体が急変したようです。病院へ向かわせますので許可をいただけますか」 「もちろんだよ。早く行かせてあげて」  アニエスがクレアの外出許可と車の手配を執事に伝えた。大丈夫だろうか。なにごともなければいいけれど……クレアの心細そうな顔が浮かんで、心がざわついた。
/567ページ

最初のコメントを投稿しよう!

234人が本棚に入れています
本棚に追加