9.Get down

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「棚ぼただなぁ、ミハエル」 「なんの話?」  見当がつかず、僕は訊き返した。 「叔父上からクレアを身請けしてもらっただろ」  棚ぼた……結果的にはカイの言う通り、これ以上ない幸運だった。 「バルツァー殿には感謝してるよ。早くメイドの仕事に慣れてくれればいいと思ってる」 「は? 置いてく気かよ」  カイが批難めいた声を上げ僕を見た。人ひとりの将来を左右する事柄なのに、簡単に言わないで欲しい。 「連れて行くつもりはないよ。クレアには家族がいるんだ」 「またか、いい子ぶりやがって。家族がいようがいまいが関係ねえだろ。欲しいなら奪え、後悔するぞ」  いい子ぶってないのに、カイの目にはそんな風に映るんだ。すごく心外だ。 「カイは後悔したことがあるの」 「オレのことはどうだっていいんだよ。そうか、奪いたいと思えるほどの愛じゃないわけだ。ならクレアはオレがもらっとく」 「や……」 「やめて? たいして好きじゃない女でも、他人に取られるのは嫌か。ワガママー。それでレガリアに置いていくとか言ってんだもんな。矛盾の塊め」  カイが容赦なく嫌味をぶつけてくる。そっとして欲しいのに、どうして放っておいてくれないんだろう。  敵国の僕が、中途半端な立場の僕が、自己満足のために関わったらだめなんだ。
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