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王子として不自由なく、欲しいものを欲しいだけ手にしてきたであろうカイは、気に入ったものを奪うことも厭わない。
「どうしてカイは僕に意地悪言うの」
「楽しいからに決まってんだろ」
「殿下、飲み過ぎですよ。ミハエル様に絡むのはやめてください」
アニエスがカイの手からグラスを取り上げた。
「こいつ見てるとイライラすんだよ」
「見なければいいでしょ。僕を呼び出して、嫌味言って、まるでお子様だよ」
売り言葉に買い言葉だった。カイが小さく舌打ちする。
「ミハエル、自分の立場わかってんのか。ラクリマに連れてかねえぞ」
「バルツァー殿の艦に乗るからいい」
「乗せてやんねえよ」
信じられない。僕は頭にきて、だけど反論の言葉も出なくて、両手をぎゅっと握りしめた。カイは勝ち誇ったように続ける。
「ひとりじゃなんにもできねぇだろ? オレに従順でいたほうが身のためだぞ」
横暴だ。いい加減我慢ならなくて、椅子から立ち上がった。自分が正しいとでもいうように、カイが平然と僕を見据える。
「もう知らないよ、カイの馬鹿!」
子供じみた応酬とわかってても心を乱される。悔しい気持ちを持て余し、僕はカイの部屋を出た。
胸が痛い、頭も痛い。カイなんて嫌いだ。ひとにはそれぞれ事情があるのに、勝手なことばかり言って!
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