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「出発までにカイと仲直りするよ」
自分でも不思議なくらいカイに突っかかってしまった。いま頃すごく怒ってるだろうな。
「ミハエル様がいらしてから、殿下は生き生きとされてますよ」
「いじめがいがあるんだね、きっと」
「好きが高じるとああなるんです。女性相手でしたら、もう少し素直なんですが」
総じてカイの言動は僕に好意があるとは思えない。根は優しいのに。
「ミハエル様は頑固なところがおありなので、殿下もムキになるのでしょうね」
「……頑固かな」
「意外と」
以前、レキシアにも言われたことがある。ふたりに指摘されたってことは決定的だ……今後の課題として、ひとまず棚上げしておこう。
「カイもバルツァー殿も同時に出払って大丈夫? リセがまた悪さするんじゃない?」
留守の間に手の込んだいたずらをあちこち仕込みそうだ。あの情熱と負のエネルギーは、どこからくるんだろう。どうせなら社会貢献に活かせばいいのに。
「対応策は万全にして参ります」
「アニエスが一緒なら心強いよ」
デイトナはどんな艦だろう。期待にそわそわする一方で、心の隅に払拭し難い不安もあった。
「捕虜交換後は、敵同士に戻りますね」
「そう、だね……」
気にしていたのはそのことだ。逆らえない現実に心が曇る。
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