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考えないようにしてたことだった。プライマリに帰還後、ケルサス軍との戦闘は避けて通れない。カイとアニエスが艦に乗らないでくれるのが、せめてもの救いだった。
生死を懸けた戦いにおいて、攻撃に手心を加えることは許されない。僕はプライマリを守るために、カイとアニエスの同胞の命を奪う立場にある。
「すみません、困惑させてしまいましたか」
言葉を失くした僕を気づかうように、アニエスが訊ねる。アニエスは事実を口にしただけだ。僕は首を横に振った。
「アニエスは、僕が厭わしい?」
「何故です? 逆ですよ。こうしてお会いできましたのに、とても残念です。心の内では離れ難く思っています」
仕事で仕方なく僕のお守りを務めてくれてるとばかり思っていた。残念と感じるくらいには、受け入れてもらえてたのかな。
「僕も同じ気持ちだよ。でも、前に友人じゃないって言われたから」
「それは、身分が違いますし……まさか、そんなことを気にされていたんですか」
「僕にとっては大きなことだよ」
アニエスはふと、戸惑いの表情を浮かべた。
「ミハエル様は変わった方ですね。いえ、侮辱したわけではありませんよ。ただ、戦闘を離れたら普通の人間で、ひとを思いやる愛情がある方なんだろうなと。クレアの件からも察しはつきますが」
「どうしたの、急に」
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