3.Past and future

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「わかった。一旦ペンディングってことで」  かたくなな僕にあきれたのか、レキシアが話題を切り上げた。僕はほっとした。時間が経てばレキシアの気も変わるだろう。 「まずは明日中に必ずゴールしよう。夜は暖かいベッドで眠れるようにする。今夜は我慢な」  レキシアが僕の頭をぽんぽんとたたいた。弟にするような優しい仕草だった。子ども扱いされてる。でも嫌じゃなかった。レキシアって、不思議なひとだ。 ***  星を頼りに夜通し歩いた。星座の基本を知らない僕に、レキシアがわかりやすく説明してくれる。  話はどれも面白く新鮮だった。質問するとすぐに答えをくれる。僕は関心しきりだった。遭難しかけてるのに、不安はいつの間にか消えていた。  翌日下山した僕たちは、怪我もなくゴールできた。疲れたけど、楽しかった。こんな風に思えたのはいつぶりだろう。  規定時刻を大幅に超過して教官たちに心配をかけたものの、迷子(ロスト)は毎回想定内のアクシデントでペナルティはなかった。  罰則が下ったのはレキシアを嵌めた上級生のほうだ。不用意な行動でチームを危険にさらした。当然の結果だった。  その後、何度か合同演習があったものの、レキシアと同じ隊になることはなかった。
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