2.Draw

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「レキシア殿が通信に応じられます。ミハエル殿もお立合いください」  穏やかさの中に緊張が垣間見えた。僕は頷き壇上のコマンドフロアに視線を移した。ドレッドノートの指揮官、レキシア・エヴァレット中将と目が合う。  レキシアは僕よりひとつ上の二十三歳で、一個艦隊の約半分、六千隻を指揮下に置く。黒の軍服と夜空色の髪と瞳、整った容姿もさることながら、惹きつけられるのは内面から溢れる才気ゆえだ。  いつもは帰艦後すぐ戦果を報告に行くけれど、今日は勝手が違う。落ち着かないままラウルの横に並んだ。 「ヤバげな会見ぽいっすね」 「エリック、静かに。始まるよ」  正面スクリーンの映像が切り替わり、深紅の軍服を纏った精悍な顔つきの男性が映し出された。  年の頃は四十歳前後、波打つ赤褐色の髪と同色の瞳は好戦的な光を宿している。 『私はケルサス連邦軍総司令官、マクシミリアン・バルツァー元帥だ。通信に応じていただき感謝する』  バルツァーが低音の良く響く声で名乗ると、レキシアも礼節ある態度で挨拶を返した。 「第一宙域中央政府軍、第十艦隊司令、レキシア・エヴァレット中将だ」 『ずいぶん若い指揮官だな』  バルツァーがレキシアを見てひと言感想をもらした。 「指揮を執るのに年齢は関係ないだろう」 『能力ある者が上に立つのはいいことだ。戦死者が減る』 「誉め言葉として受け取っておく。本題は何だ」  さすがレキシアだ。敵のトップを前に怖気ることなく渡り合っている。  『先刻プライマリ第一艦隊の大将を捕縛した。早速だが、提案がある。今回の会戦は、引き分けとしないか』  通常では有り得ない唐突な申し出だった。艦橋がざわめき、レキシアは眉をしかめた。 ***** ※詳しい登場人物紹介は「アラタな世界」https://estar.jp/novels/25543008の5ページ目以降をご覧ください。
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