3.Past and future

12/25
前へ
/567ページ
次へ
「どうした、ミハエル」  言葉を失くした僕の肩にレキシアの手が触れた。無意識に一歩後ずさった。 「その子が……どうしたんですか。保護したってなんですか」 「正門前で倒れたんだ。ひどく衰弱してる。俺は今日歩哨(ほしょう)補佐で正門にいたんだ」  歩哨補佐は生徒が持ち回りで担当する軍の疑似業務のひとつで、正門の警備と訪問者対応が主な仕事だった。 「フィーネはミハエルを訪ねてきたと言っていた。だからおまえを呼んだんだ」  医務室に入ると、左右に並んだベッドの一番奥に女の子が眠っていた。点滴の調整をしていた校医のメアリ先生が手招きする。  室内にいるのは僕たちだけ。とても静かだ。心臓が不穏に騒ぎ出す。  息をつめて近づいた。肩で切りそろえられた金髪と、まつ毛の長い愛らしい顔立ちは、確かにフィーネだった。 「この子はいくつかしら」 「十五歳です」 「そう……体つきからして栄養が足りてないみたいね。あるいは、病気なのかも」  メアリ先生は自分の子供を心配するように言った。
/567ページ

最初のコメントを投稿しよう!

234人が本棚に入れています
本棚に追加