3.Past and future

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 フィーネと出会ったのは母さまが亡くなったあとだ。わずかな期間、一緒に過ごした。  士官学校の入学報告をして以来、会うのは二年ぶりだった。時間は経ったけれど、フィーネの外見はあまり変わってなかった。  着ている服は以前会った時と同じものだ。襟にあしらわれた赤いリボンは色あせ、ベッドの下に揃えられた黒のエナメル靴は、ところどころ擦り切れている。 「リルシュくん、フィーネさんのご両親を知っている? 連絡が取りたいのだけど、お財布も身分証も持ってないのよ」 「フィーネに両親はいません。連絡するなら、孤児院に」 「まあ、そうだったの。もしかして、コルヌは孤児院の名前?」  僕は混乱していた。コルヌは店の名前だ。なにから説明を……いや、しないべきか? 逡巡していると、不意にフィーネが目を覚ました。僕を見とめ、安堵に顔をほころばせる。 「ミハエル……嬉しい。やっぱりこの学校だったのね」 「久しぶりだね」  普通ならここで元気そうだねって声をかけられるのに、フィーネの顔は青白く声も弱々しい。差し出された手も骨ばっていて、健康から遠いところにいるのがわかった。
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