3.Past and future

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 僕はそっとフィーネの手をとった。  質量がないんじゃないかと思えるほど、軽かった。 「どうやってここに来たの? 荷物は?」 「夜行バスに乗ってきたのよ。荷物はね、今朝ターミナルに到着したら、お財布と一緒になくなってたの。寝てる間に盗まれたみたい。ごめんね、ミハエルにおみやげを用意したのになくなっちゃった」  フィーネは寂しげに微笑んだ。僕は胸の奥にひりつくような痛みを感じた。 「ここまでターミナルから歩いてきたの?」 「ポケットに残ってたお金でタクシーを拾ったの。ここは素敵な街ね。ストルテの田舎とは大違い」  地方都市のストルテは僕たちの故郷だ。緑豊かな景色と港町が目の前によみがえり、瞬きとともに消えた。 「……わたし、孤児院から逃げてきたの」
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