12.Crossroad

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 まだ僕に言い足りないことがあるのかと、あわてて心の準備をしたものの、放られたボールは想像したような重い内容じゃなかった。 「美味い酒があるんだ。飲ませてやるから着替えてオレの部屋へ来い」 「え、ちょっと待ってよ」  一方的に決められても困る。呼び止めたのにカイはさっさと出て行ってしまった。 「行かなきゃだめ?」  助けを求めると、アニエスがかすかに笑みを浮かべた。 「ご心配なさらず、私も同席します。十分後にお迎えに上がりますので、ご用意ください」 「……はい」  僕の返事を聞いたアニエスは、一礼して扉を閉めた。  強引な誘いにためらいはあった。でも僕を心配してわざわざ来てくれたのもわかる。いつものごとくカイは脱線気味だったけど。  それを差し引いても、温かい心づかいが嬉しい。ありがたいのと申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。    こんな僕にも、ふたりは優しい。不意に泣きそうになってこらえた。  レキシアやドレッドノートの距離が遠ざかるほど、僕は弱くなっていく。だけど。もう少しだけ、頑張ろう。もう少しだけ、頑張らなきゃ。  僕を支えてくれるひとたち、そして僕の帰りを待っていてくれる仲間のために。
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