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「なぜだ」
「生まれつき脚がお悪いんですよ。“王位を継ぐ者は心身ともに健全でなければならない”との不文律がレガリアにはあるんです」
「因習か。では、王位はバルツァーが?」
それも“いいえ”です、とシンが頭を振り否定する。
「エルンストと側室の子で、カイよりひとつ年少のリセ王子がいます。いまのところリセが継承予定ですが、超がつくほどの問題児でしてね」
バルツァーはリセを王位に就かせたくない。ゆえにエルンストの生死を伏せている――。
狙いはわかったが、だとしたら、誰を即位させようとしてるんだ。リセを葬ればバルツァーの継承順位は上がる。下剋上を企んでいるのだとしても。
「周囲を欺き続けるのも限界があるだろう」
「ええ。だからこそ画策してるんですよ、バルツァーは」
独善的な策謀に、ミハエルは利用された。汚いやり方で。バルツァーの真の目的はいったい……。
問いただすのをためらったのは、受け入れ難い予感が頭をもたげたからだ。胃に針で刺すような痛みが走る。確実に俺の望まないほうへ話が進もうとしていた。
ミハエルが連れ去られた理由を、認めたくない。
だが、認めなければ、真実にたどり着けない――。
「ミハエルは、イグニス王家と縁があるんだな」
「ご名答です」
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