3.Past and future

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「どうして……?」 「さよならを言いに来たの。最後に会いたくて……。わたしは思うように生きられなかったけど、ミハエルは新しい道を見つけた。寂しかったけど、嬉しかった。あなたはきっと、なんにでもなれる。ミハエルはわたしの誇りよ」 「ねえ、さよならって、どこへ行くの? 当てはあるの」  僕と同じ天涯孤独の君が。 「天国へ行くのよ。わたし、病気なの」 「治療は」 「したわ。でも治らないみたい。前の仕事が原因だろうって、お医者様が……」 「そんな」 「ミハエル、わたしの分まで生きてね。立派な軍人さんになって、デミトリオスを守って。ずっと、応援してるわ……」  そこまで話すとフィーネは意識を失った。少し遅れて救急隊員が到着し、病院に搬送する準備を始めた。 「リルシュくん、最後に声をかけてあげて」  促されたけど、僕はひと言も発することができなかった。ただ、フィーネと握手するのが精いっぱいだった。  最後の力をふりしぼって会いに来てくれたフィーネに感謝を伝えるどころか、ほかのことに気を取られ、僕の思考は飽和していた。
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