12.Crossroad

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『これはね、神さまが僕にくれた幸運の印なんだって、母さまが言ってた。大切なひとにしか見せちゃいけないんだよ』 『俺に見せていいのか』 『だってレキは僕の親友でしょう』  いつだったか、そんな会話を交わした。ミハエルの足に痣を見つけたのは偶然だった。大切なひと以外に見せるなという教えは、裏を返せば周囲に出生を知られないようにするための防衛策だったのだ。 「レキシア殿、ミハエル殿の経歴を調べ直しましょう。データベースのアクセス許可をいただけますか」  ラウルの提案は理にかなっていた。普段の俺ならすぐに応じただろう。対象が、ミハエルでなければ。 「調べても基本データ以外の事柄はピックアップできない」 「ですが」 「無駄だ」  これは完全に俺の私情だ。データベースだけならまだいい。範囲を広げ入学以前に調査が及べば、触れられたくない過去に行きつく恐れがある。  ミハエルの体面を保つにはどうしたらいい。査問の目を掻いくぐりながら、当たり障りなく事を運べるか。考えをめぐらせるのに浮かぶ答えは解決策とはほど遠いものばかりだ。  ミハエルを傷つけたくない。  悲しませるようなことはしたくない。  俺は、ミハエルの尊厳を守りきれるのか――。
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