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「刺青があったとしても、科学的に立証できなければ直系とは言えないだろう」
「疑わしい場合、DNA鑑定は必須でしょうね」
「シンにも刺青が?」
「いいえ、影武者にはありません」
ミハエルが王族でなければ、捕虜交換は行われたはずだ。中止になったのは鑑定結果が“決定的だった”からだ。そう仮定すれば、バルツァーの強引な行動も説明がつく。
認めるべきか。ここで。ミハエルがレガリアの王子だと。ラウルとエリックはどう思うだろう。
王子と認めた時点で、ミハエルは私人から公人となりはしないか。デミトリオスでの扱いはどうなる。敵方の人間と確定すれば、二度と迎えに行くことは叶わない。
聴取の記録共々、シンを消して証拠隠滅を図る……そんな馬鹿げた妄想がよぎるほど、俺は心を乱されていた。
いくら隠しても、事実は独り歩きするだろう。俺の権力では、すべてを握り潰せない。ミハエルを守り切れない。救うことができない。
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