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「レキシア殿、お顔色が優れません。なにか飲み物をお持ちしましょうか」
押し黙った俺をラウルが心配する。些細な変化を見落とさない優秀な右腕。こんなときばかりは見抜いて欲しくないんだが。
力なく首を振り、俺は顔を上げる。ラウルとエリックがミハエルを大切に思う気持ちは俺と同じだ。艱難辛苦を共に乗り越えて来たふたりには、真実を知る権利がある。
決心して口を開きかけたとき、ラウルがレコーダーをタップして電源を落とした。
「ラウル?」
「休憩にしましょう、レキシア殿。いまからの時間はプライベートです。何をしゃべっても記録に残りません。レキシア殿からお聞きしたことすべて、忘れろとおっしゃるならそうします。私とエリックを信用して、話していただけませんか」
俺の複雑な胸中を察したラウルが、気を回し促す。敵わないなラウルには。そうだよな。嘘で塗り固めれば、俺は信頼も友情も失くすだろう。
ひとりでどうにかしようと焦るな。力を貸して欲しいと、頼ってもいいんだ。
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