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「う……ミハの性格上あり得ないっす、マジかぁ……でもなんで足の裏?」
「目立つ場所だと、なにかと標的にされやすいからですよ」
懐疑的だったエリックがシンの説明に絶望をにじませ、頭を抱えた。
「ラウルは文様の件をミハエルから聞いたことは?」
「いいえ、なにも……ミハエル殿が仮に王子なら、なぜ敵地のデミトリオスで暮らしていたのでしょう」
至極真っ当な疑問だ。ラウルがガラスポットを片手に、二杯目のコーヒーをそれぞれのカップに注いでいく。
「王宮内の紛争から逃れるため、母君が身分を偽り亡命したんですよ」
シンはミハエルがデミトリオスで暮らすに至った経緯を、順を追って説明していった。
「亡命後も奥方は刺客に追われ、しばらく各地を転々としていたようです。そのうち音信不通になり、行方知れずに」
「ずいぶん執拗な追っ手だな」
「ミハエル殿を亡き者にすれば、後継として優位に立てる輩がいますからね」
レオノールの次はミハエル、ミハエルが脱落すれば、エルンストが王位に就く。とすれば、ミハエルと母君の命を狙っていたのは、反乱を起こした弟の残党ではなく、騒動に便乗したエルンストなのか?
バルツァーは当時八歳だが、エルンストは十歳上の十八歳だった。臣下に命じれば暗躍も可能なはず。
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