12.Crossroad

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【ミハエルSide】  木立の間を赤や黄色の葉がはらはらと舞い落ちた。吹き抜ける乾いた風に、秋の深まりを感じる。  僕が初めてレガリアのアストラ王宮を訪れたのは約ひと月前。その頃と比べると季節が一歩進んだ。昼間は暖かくても、日が沈むと急に肌寒くなる。  百華園のベンチで読書していた僕はタブレットを閉じ、穏やかに澄んだ青空を見上げた。  双頭の鷲が滑空していく。初めて見た。大きな翼が戦闘艇みたいだ。しばらく操縦してないな。飛べないまま、ここで冬を越すことになるんだろうか。 「ミハエル様、お寒くありませんか」  センチメンタルになりかけたとき、クレアが小径の向こうから歩いてきた。お茶の時間に迎えに来ると言っていたから、そろそろ十五時なんだ。  プラチナブロンドの長い髪をゆるく巻いたクレアは、ダークグリーンのワンピースをまとい、ウエストを細いリボンで結んでいた。洋服はシンプルなのに華やかに見えるのは、内面が輝いてるからだ。 「いかがなさいましたか?」  思わず見惚れた僕に、クレアがにこやかに訊ねた。今日も芸術的に可愛いね、なんて言ったらセクハラかな。
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