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「クレア、せっかく来てくれたけどまだ戻れないんだ」
僕には常時十人ほどの護衛がつけられていた。半分監視も兼ねてるんだと思う。視界に入る範囲に控えてるのは二名で、あとはどこに散らばってるのかは不明だ。
「カイ様はお見えになられませんか」
「気が変わっちゃったのかもね」
カイに呼び出されてわざわざ庭園に足を運んだのに、当の本人は待ち合わせ時間を過ぎてもいっこうに現れない。アニエスは公務で朝から出かけていて、カイがなにをしたいかは聞けず仕舞いだった。
「もう少しだけ待ってみるよ」
「では、お部屋でお待ちしておりますね」
立ち去ろうとしてクレアが歩みを止めた。
「ミハエル様、わたし……こうしてまたお会いできてとても嬉しいです」
アストラ王宮に到着したのは、一昨日。諸事情により滞在が延びたと周知され、マリーほかたくさんのメイドたちに歓待を受けた。傷心の身としては複雑で、心の底から喜ぶのは難しかったけれどありがたかった。
待遇は改善され、監視つきでも外で読書できるくらいの自由は与えられている。ただ、バルツァーの今後の動きによっては制限がかかるだろう。
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