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「僕もクレアに会えて嬉しいよ」
これは、偽らざる気持ちだ。あまり近づきすぎないようにセーブしつつも、クレアの優しさに包まれたいと思ってしまう自分がいる。
「ね、クレア。お母さんの体調はどう?」
「その節はご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。母は先日他界いたしました。穏やかな最期でした」
「ごめん……知らなくて。働いてていいの? しばらく喪に服しててかまわないんだよ」
「体を動かしていたほうが、気も紛れます。それに……ミハエル様のおそばにいたくて……すみません、不謹慎ですね」
両手を胸の前でぎゅっと握り、クレアがうつむいた。こんなとき、どんな風に返せばいいんだろう。慰め? 励まし? でも……。
「元気を出してね」
不謹慎なのは僕のほうだ。クレアがそばにいると、くすぐったくて、心が揺れて、体温が上がる。
「ミハエル様発見! こちらにいらしたのですねー!」
突然名前を呼ばれてどきりとした。マリーが少し離れた百華王の垣根の向こうに顔を出す。
「十五時のおやつ、リクエストはございますか!」
マリーが石畳を勢いよく走ってきた。お仕着せのタイトスカートでよくダッシュできるなと感心する。
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