3.Past and future

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「待てったら!」  中庭の柱廊(コロネード)まで走った僕を、レキシアはいとも簡単に捕まえた。悔しい。逃げ切れなかった。 「本気で走るな、馬鹿。疲れるだろ」 「追いかけて欲しいなんて言ってません」  お互い息を切らしながら向かい合った。レキシアは僕の腕をつかみ、雪を避けるように柱廊を歩き出す。  建物の死角で人目につかない場所まで移動すると本鈴が鳴った。授業はどうするつもりだろう。 「メアリ先生にフィーネのこと聞いたよ……残念だったな」 「その節はご迷惑おかけしました。話はそれだけですか」  失礼な態度をとっているのはわかっていた。無視した上、走って逃げた。今度ばかりはレキシアも怒るだろう。それでもいい。 「どうしてそう突っ張るんだよ」 「僕は目立ちたくないんです。もうかまわないでください」  あきれたのかレキシアがため息をついた。  その吐息はふわっと白く煙り、はかなく目の前で消えた。
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