3.Past and future

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「おまえ、どこかのサークルに所属したか?」  根気強くレキシアが語りかけてくる。  僕はつま先に視線を落としたまま、首を横に振った。 「前に研究会のこと話しただろ。ようやく本格始動するんだ。おまえもメンバーだからな」  断ったはずなのに、なぜか所属まで話が進んでいた。 「そういうのは優秀なひとを誘ってくださいって、演習のときお話しましたよね」 「期末試験で、五十番順位がアップしただろ?」  このひとは……成績は上位しか発表されないのに、どこからそういう個人情報を仕入れてくるのか。 「それでも。僕には無理なので」 「どうしてだよ」  レキシアの声に苛立たしげな色がにじんだ。 「やる前からあきらめるなよ。おまえはもっと伸びる可能性が――」 「やめてください!」  我慢できず言葉をさえぎった。  僕は胸の奥にくすぶる焦りを止められず、レキシアにぶつけた。 「コルヌがどんな店か、調べたんでしょう?」  レキシアの顔が曇った。それは肯定を意味していた。  やっぱり――。失意と絶望が同時に渦巻く。 「ミハエル、その件はもう」 「フィーネと僕はそこで働いてた……!」  感情の波が沸点を超えた。僕の内側で嵐が吹き荒れる。  気道がふさがれてしまったかのように息が苦しい。
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