2.Draw

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「引き分けとはどういうことだ」 『このまま戦い続けても、プライマリが勝利する可能性は低い』 「早々に決めつけると痛い目を見るぞ」 『そう怒るな、貴官の活躍は承知している。だが時すでに遅しだ。仕切り直すほうが賢明だろう。お互い貴重な兵力を損なわず、次の戦のために温存できるのだからな』 「……何を企んでいる? 大将を捕縛した件と関係あるのか」 『左様、取引がしたい。捕虜の交換だ。私の実兄がプライマリの首都星デミトリオスの軍用施設に収監されている。解放し引き渡し願う』  大将とバルツァーの実兄を交換――。捕虜交換の前例はあるけれど、手続きが複雑で引き渡しには相応の時間がかかる。 「交渉相手を間違えている。何故権限のない俺に持ち掛けるんだ」 『貴官の艦にミハエル・リルシュ准将が乗っているな?』  出し抜けに名前を呼ばれ、僕は身構えた。 『まず此度の会戦で捕虜となった大将とリルシュ准将を交換する。兄の引き渡しの際、リルシュ准将はお返ししよう』 「まわりくどいこと極まりない。そのまま大将を捕虜としておけばいい話だ」  レキシアのもっともな言い分に、バルツァーは薄く笑った。 『ずいぶん上官を無下に扱うのだな。大将は体調を崩している。プライマリの総司令、ネスラー元帥が代理としてリルシュ殿を指名したのだ』 「ネスラーが?」  僕の心臓が嫌な音を立てた。戦闘のさなか、いつの間に取り決めたのだろう。
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