3.Past and future

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「ミハエルも俺と同じだろ。今の自分が存在するのは、過去の選択があったからだ。生きるために必要だった」 「でも」 「綺麗なままでいなければなんて決めつけてたら、何もできないよ」 「そうかもしれませんけど、僕は」 「おまえは何も悪くない。自分の瑕疵のように考えるな」  ずっと自分を否定していた。ずっと自分の過ちだと思っていた。僕の心にレキシアの言葉が染み込んでいく。強くて優しいその温かさに、胸がいっぱいになった。 「俺達は今とても無力で、誰も救うことができない。でも、力をつけたら、誰かを救うことができる。それがたった一人でも……軍人になる意味はあると思うんだ」  レキシアは友人を失って、罪悪感を背負い、それを乗り越えようと努力してきた。もう大事な人を置いて逃げ出さずに済むように。 「僕は、ここにいてもいいの……?」  踏み出したい気持ちと恐れる気持ちが混ざり合う。 「当たり前だろ。フィーネの夢を叶えてやれよ。まずはそれがクリアすべき目標だと思うけど?」  ――立派な軍人さんになって、デミトリオスを守って。  フィーネの笑顔がよみがえり、張りつめていた気持ちがほどけていく。   僕は変われる? レキシアみたいに。変わってもいいのかな。こんな僕でも役に立てるだろうか。誰かを救うことができるだろうか。フィーネや僕みたいな子供を一人でも……。ふと、胸に小さな希望の火が灯る。
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