4.Departure

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4.Departure

 定刻通りバルツァーの艦から派遣された小型艇がドレッドノートに到着した。  搭乗口へ向かう細い通路の両側に、レキシアとラウルのほか警備兵が待機している。武装したケルサス兵が大将を連れ歩み出た。高齢のせいか疲労感はあるけれど、顔色も体調もさほど悪いようには見えなかった。  僕たちは敬礼し、型通りの挨拶を済ませ彼らを迎え入れた。引き渡しの責任者として訪れたのは、リイン・アニエスという名の中佐で、茶系の短髪に眼鏡をかけた折り目正しい印象の青年だった。 「ご苦労」  大将がざらついた声を発した。感謝の意は感じられず、捕虜の交代は当然といった態度だった。  その他大勢である一軍人の僕に感情が動かないのは仕方ない。なにかしらの言葉を期待するのも間違っていると思う。ただ、自分が大将の部下であることに失望を禁じ得なかった。  敵方に強制されたとしても、レキシアなら部下を身代わりにはしない。そもそも始めから置換え(リプレイス)など承服しないだろう。
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