4.Departure

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「ケルサス軍に引き渡す前に、ミハエルを指名した理由を伺いたく存じます」  レキシアが訊ねると、大将は険しい目を僕たちに向けた。   「すでに聞き及んでおろう」 「ネスラー元帥からはひと言も。代わりにご説明ください」 「将官以上の者と条件が出されたのだ。元帥はリルシュ准将を選んだ」 「表向きはそうでしょう。裏の理由は何かとお訊きしている」 「き、貴様……表も裏もあるまい!」 「大将殿は身代わりを立ててまで、プライマリに戻りたかったのですか。プライドの欠片もない」  レキシアの歯に衣着せぬ言いように、大将が感情をあらわにした。 「口を慎め、エヴァレット! 私は命令に従ったのだ。すべてネスラー元帥の意向だ!」  僕はハラハラした。疑念をクリアにしたいレキシアの気持ちはわかる。でもこれ以上の口撃(こうげき)は、火に油を注ぎかねない。   「お取込み中のところ恐縮ですが……時間も迫っておりますので、リルシュ殿をお預かりし引き揚げたいと存じます」    アニエスが控えめに話を振り、レキシアに許可を求めた。良かった。アニエスのお陰で炎上せずに済んだ。 「今後の予定として、リルシュ殿はレガリアの首都、アストラ王宮にてお過ごしいただきます。その間は私がお世話させていただきますので、お供の必要はございません」 「単身で敵地に渡れと?」  レキシアがアニエスをきつく睨みつけた。僕の胸にさざ波が立ち、不安がよぎる。
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