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僕は小さな窓からドレッドノートを見下ろした。清廉で美しいシンメトリーの流線フォルム。仲間たちを乗せた艦が小さくなっていく。
僕に許された持ち物はプライマリの身分証だけだ。衣食住に関わるものは、支給品を受け入れることになっている。
「アニエス殿の仕える場所が王宮だから、そこへ招かれるのですか」
「それもありますが、バルツァー様はケルサス星系君主であられる現国王の第二王子でいらっしゃいまして――」
「王子……!?」
驚きのあまりアニエスの言葉をさえぎるほどの声を立ててしまった。
「現国王はローマン・イグニスというお名前では。それに、カイ王子に仕えているとおっしゃっていましたよね?」
「カイ王子はイグニス国王の孫でエルンスト様の息子、バルツァー様はイグニス国王の次男でエルンスト・ゼクレス様の弟君というお立場です」
バルツァーとゼクレスは公爵位の名で、王位継承者のみイグニスを名乗れるのだと説明され、なぜ名字が違うのかやっと理解できた。
「すみません、不勉強で」
「いえ、特に王子が参戦していることは公にしておりません。ご存じないのは当然です」
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