2.Draw

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「何故ミハエルなんだ」 『将官以上の者と条件を出した』  そういうことか……。ネスラー元帥は一番無難な年少の僕を推挙したんだ。 「将官はほかに大勢いるだろう」 『逆に問うが、リルシュ准将では頷けぬ訳があるのか。友人は特別扱いか』  レキシアが一瞬言葉を失くした。   『部下を一人差し出せば即時停戦、負けずして全員帰還できるのだ。迷う理由はあるまい』  ネスラー元帥は僕一人の命と、全軍の命を無慈悲な天秤にかけた。命令は絶対だ。替えなどきかず、抗弁も許されない。 『では即時停戦だ。両軍、旗艦をのぞき全艦射程圏外へ下がらせよ。準備でき次第、そちらに迎えの小型艇を向かわせる』  通信を切ったレキシアが、手の平で指揮卓を叩きつけた。触れたら火傷しそうなくらい、怒りの熱が伝わってくる。  一方で、僕の体からは血の気が引き、寒気を感じるほどだった。  肩で大きく息をしたレキシアが、指令台(コマンドフロア)の下に控えていたラウルを呼んだ。 「交代で食事と休息を。全艦に通達してくれ」 「かしこまりました」
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