2.Draw

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「ミハエル」  レキシアに呼ばれ顔を上げた。夜空色の澄んだ瞳が憂いをおびている。 「着替えたら指令室へ来てくれ、今後の件を打ち合わせる」  一方的な命令を押し付けられるのは初めてじゃない。レキシアも僕も何度となく経験がある。その度に揺れ動く気持ちを抑え頑張ってきた。  苛立ちや憂鬱が次々浮かんでは消えていく。エリックが気遣わしげに僕を見た。 「ミハ、こんなのあり得ないって」 「僕も……どう受け止めたらいいか……」  でも、思い煩ってる場合じゃない。まずは目の前の任務が優先だ。できるだけ平常心で。僕は頭を振り雑念を追い払った。 「ラウル、被弾した艦はどれくらい? 負傷者が多いようなら、ドレッドノートからも救護を向かわせる。僕が指示しようか」 「ありがとうございます。エリックに任せますのでご心配なく」 「え、おれ」 「飛ばないときは協力してください。ミハエル殿はレキシア殿のところへ。後ほど私も伺います」 「わかった。じゃあ後はよろしくね」  本当は何かしているほうが気がまぎれるけど、迎えが来るまでに準備を終えなければ。と言っても……何を準備したらいいのか。
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