2.Draw

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「一段落したらミハエル殿の好きなお茶をお淹れしますよ」  ラウルなりの気づかいだった。親しいからといってずかずかと入り込んできたりせず、かといって傍観者を決め込んで冷たいわけでもない。  必要なときに必要な配慮をしてくれる。甘えたがりなのかもと反省しつつ、やっぱり今日もラウルの優しさに甘えることにした。 「ありがとう。本当はお酒が飲みたい気分だけど」 「私もです。代わりにブランデーケーキをご用意しましょう」 「ラウル、おれにもひと切れ」 「エリックの分はありません」 「なーんでおれは塩対応なんすかぁ」  ぼやくエリックを連れ、ラウルが残務の片づけに向かった。いつも通り接してくれるのがありがたい。  不完全燃焼の収束でも、今後を思えば仕切り直しはプライマリにとって好都合かもしれなかった。  あくまで全体の話で、個人的には納得がいかない。上官の代理で捕虜になるとは、夢にも思わなかった。  指令室に向かいながら自分の胸の内を見つめてみる。  心の抵抗が強い。軍人ならどんな命令であれ従うのが当たり前なのに。  いつの間にか怠惰になってしまったのかな。レキシア以外の命令は聞きたくないなんて、良くない傾向だ。
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