2.Draw

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 出発予定時刻まであと数時間。僕はレキシアたちと艦橋(ブリッジ)奥の司令室にこもり、ラウルが淹れてくれたハーブティーを飲んでいた。  指令台(コマンドフロア)からさらに上の、中二階にあるこぢんまりとした部屋は、レキシアの執務室と休憩室を兼ねていて、片側に星々を見渡せる大きな窓と仮眠ベッド、ミーティング用の円卓が置いてある。 「ミハに白羽の矢が立つのは、どう考えてもおかしいっすよ!」  エリックが文句を言いながら、ブランデーケーキを二切れ平らげた。 「騒ぎ立てても状況は変わりません。おつらいのはあなたではなく、ミハエル殿なのですよ」 「老害の嫌がらせっすよ? なんでみんな冷静なんすか!」 「大声を出すな、エリック」  レキシアの抑制のきいた声に、エリックが続く言葉を飲み込んだ。表に出さないだけで、誰よりも怒っているのはレキシアだった。
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