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10.Conflict
【レキシアSide】
午後の会議――捕虜交換の進捗モニタリング――に備え早めの昼食を終えた俺たちは、南棟一階のカフェテリアに立ち寄った。
木々の葉が初夏の日差しをさえぎる屋根の役目を果たし、テラス席でもさほど暑さは感じない。
「あとどれくらいだ?」
俺の問いにラウルはタブレットをスクロールし、更新された時間を読み上げる。
「時差も含めラクリマ星域到着は今から一時間後、会見はその一時間後、十三時半の予定です。現在航行に遅れは出ていません」
「いよいよっすねぇ。あの糸目男、ケルサス語噛まないでしゃべれますかね」
「なにかと最善慣行からほど遠い奴だからな」
「こねくり回すのが得意っすよね。シンプルを複雑に、複雑をより煩雑に」
下手の考え休むに似たり、だ。ベストは望まない。ベターなレベルで会見と引き渡しを終えてくれればいい。
「我々はベッカー准将にすべて委ねるしか術がありません。温かく見守りましょう」
「ミハが戻ってきたら熱い抱擁とねぎらいのキッスで迎えてやろ」
「セクハラはだめよ、エリック殿」
エリックの冗談にかぶせるように、アルトの柔らかな声がテラス席に響いた。顔を上げると見知った女性が視界に入った。俺は一瞬目を疑う。
「ルリジシャ……」
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