我がガラテアに望む

11/12
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
……おかしいな。 こんなに近くでコップを割ったのに。 もしかして体調が悪いのか。 熱でもあるのではないだろうか。 心配になって、彼女の額に手をあてようと、俺はベッドの縁に片手をついた。 横向きの彼女の顔は、見事に輝く長髪に隠されていたが、俺がベッドを軋ませた拍子に、その一束がぱさりと動いた。 俺は、息をのんで手を引っ込めた。 彼女の目は開いていた。 潤いのない白眼が、俺を睨み付けていた。 心臓がばくばくと音を立てて打ち始める。 頭はもう破裂しそうなほどに痛む。 ーー何故か、脳裏を天使の像がよぎった。 綺麗な像だ。 でもなぜこんなときに? あの像はなんだったっけ?どこで見たんだ……? 駄目だ駄目だ、考えがまとまらない。 彼女はどうしてしまったんだ? こんな恐ろしい形相をして。 白い目を見張って、けれど間違いない、俺を見てはいない……。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!