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……おかしいな。
こんなに近くでコップを割ったのに。
もしかして体調が悪いのか。
熱でもあるのではないだろうか。
心配になって、彼女の額に手をあてようと、俺はベッドの縁に片手をついた。
横向きの彼女の顔は、見事に輝く長髪に隠されていたが、俺がベッドを軋ませた拍子に、その一束がぱさりと動いた。
俺は、息をのんで手を引っ込めた。
彼女の目は開いていた。
潤いのない白眼が、俺を睨み付けていた。
心臓がばくばくと音を立てて打ち始める。
頭はもう破裂しそうなほどに痛む。
ーー何故か、脳裏を天使の像がよぎった。
綺麗な像だ。
でもなぜこんなときに?
あの像はなんだったっけ?どこで見たんだ……?
駄目だ駄目だ、考えがまとまらない。
彼女はどうしてしまったんだ?
こんな恐ろしい形相をして。
白い目を見張って、けれど間違いない、俺を見てはいない……。
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