第二話 魔物とハンター

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 そして再び、さっきの男女である。 「やっとここまで戻ったか……」  藪を掻き分けて、男が森を抜けた。 「ふう……。いやはや、全くこれっぽっちも、大したこと無かったな」  虚勢を張る男であった。  そんな男の眼前には、森を突っ切るように、一本の道が広がっていた。 「……益荒男が聞いて呆れますね」  男に続いて、女も森を抜けてきた。 「う、うるせーよ……」  男が閉口したその時、太陽が二人を照らした。 「うおっ! 眩しっ!」  男が目を細めた。  大袈裟に驚く男の成りは、精悍な若者であった。  その背丈ときたら、並みの男より頭一つ以上も高い。  はち切れんばかりの筋肉を纏っていて、さながら歴戦の戦士である。  短く刈り込んだ髪は黒く、黄色の肌は健康的に日焼けして、瞳は茶色であった。  この地方では珍しい顔立ちであったが、顔の掘りは存外に深く、無骨な面構えは決して三枚目ではない。  中性的なではないものの、人によれば十分格好いいと言う、そんな容姿であった。 「いい加減、明暗の変化にも慣れなさい」  女が言って、男の横に並んだ。  同じく目を細める女であるが、その所作は落ち着いたものである。  無骨な男と対照的に、こちらは繊細な少女であった。  透き通るような白い肌の少女は、長い金髪を短く結い上げている。  瞳の色は青く、この地方によく見られる顔立ちであった。  背丈こそ並みの女より低いが、顔立ちは抜群に整っている。  道を歩けば誰もが振り返る、正に絶世の美少女であった。  そんな超絶美少女な女ではあるが、終始仏頂面を決め込んでいて、纏う雰囲気はどこか剣呑である。  ちなみに胸は小さい。 「常に先を見据えて、心を構えておくのです。これはハンターの基本ですよ」 「……肝に銘じておきます」  女もとい少女の忠告に、男が殊勝に応じた。  この凸凹でこぼこコンビ、会話の通りハンターである。  お互いの見た目とは裏腹に、少女が師匠で男が弟子であった。  もっとも、男の馴れ馴れしい口調からは、関係を読み解くことは難しい。
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