第二話 魔物とハンター

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「まだ陽は高いですが、今日はこの辺で切り上げましょう」 「何で? 俺はまだまだいけるぞ?」  少女の申し出に、男が首を傾げる。 「ハァ……。貴方のクソ体力は認めますが――」  呆れつつ少女が続ける。 「もう少し、知恵を付けた方がいい」 「な、何だよ?」  少女の言い草に、男が閉口する。 「流星竜(リントブルム)がいるのですよ。貴方に仕留められるヘボい魔物なんて、みんな逃げ去っています」 「あっ……。なるほどな」  理路整然とした少女に、男が納得した。 「よっしゃ! それじゃあ、今日のところは帰るか!」  男が言って、道を歩き出した時である。 「動かないで!」  少女が叫んで、(クロスボウ)を構えた。 「な、何だ?」  男が立ち止まった瞬間である。  太矢(ボルト)がビュンと唸りを上げて、男の首を掠めていった。 ◇◇◇◇ 「お、お前! いきなり何すんだ!」  自分の首元を押さえつつ、男が少女に詰め寄った。 「落ち着きなさい」  男に襟首を掴まれながら、少女が穏やかに言った。 「一体――」  男が言いかけた時、太矢(ボルト)が飛んで行った先で、何かが倒れる音がした。 「何だ?」  男が後ろを振り返る。  男の視線の先、道の端にある茂みの向こうで、大きな生物が倒れていた。  人間に似た毛むくじゃらの生物は、眉間に太矢(ボルト)を受けて白目を剥いている。 「あ、あれは?」 「魔猿(サスカッチ)ですね」  男の問いに、少女がサラッと答えた。 …――…――…――…  魔猿(サスカッチ)とは、その名の通り猿の形をした魔物である。  人間より大きめの体格で、四足歩行をするこの魔物は典型的害獣であった。  悪知恵が働く上、手先も器用なので、人畜に害をなす筆頭である。  家畜や農作物はもちろんのこと、時には人間そのものを喰い殺す邪悪な存在である。  その上に、魔猿(サスカッチ)を仕留めたとしても、利用方法は特にない。  肉は硬くて不味く、皮はどのように加工しても強い臭いを放ってしまう。  これらの事実が、人々の魔猿サスカッチ嫌いに拍車をかけていた。  もっとも、常に賞金がかかっているので、ハンターにとっては金の成る木と言えた。
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