行きて帰らぬ、あのリフト

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またいつの間にか目を閉じていた。 今度はなぜ目を開けたか分からない。 人の姿がまばらになり、少し静かになったからだろうか。 リフトは長い長い廊下を進んでいた。 時折、壁際の長椅子に腰掛けている人、歩いている人とすれ違う。 一度は開けたものの、瞼が重くてすぐ閉じそうになる。 体にはもう泥が詰まりきっているようで、頭を上げることもできなかった。 廊下は次第に暗くなっている気がする。 そしてその先がわずかに見えている。 見入れば見つめ返してくるような、暗闇だ。 ついに――ついに、この時が。
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