行きて帰らぬ、あのリフト

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心震えたその時、視界の端に、鮮やかな色をとらえた。 赤。 例にもれず病衣のようなものを纏った人物が、彼岸花を片手に立っていた。 珍しさに思わずその人の顔を見て――私は、体の重さも、幸福の波の心地よさも忘れた。 何をしようと、具体的に考えたわけではない。 とっさに、膝の上の傘を握りしめていた。 シートから離れた背がヒヤリとする。しかし胸の内が、カッと熱かった。 リフトを飛び降りる。 ――アイツは。 アイツは!!
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