第三話 皇女の記憶

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イヴァンがその場からいなくなったのを確認し、ゴーシュはノヴァリスの方に振り向く。 「・・・私、少しですけど記憶が戻ったんです」 「!・・・・・・」 「その・・・私が何者か、私が何をすべきかも・・・」 ゴーシュは黙ってノヴァリスの言葉を待った。しかし、彼女も言い淀んでいたので、ゴーシュから口を開いた。 「・・・言いたくないことなんですか?」 ゆっくりと頷くノヴァリス。合わせる顔がないように俯く。ゴーシュはシンプルな言葉を彼女へと投げかけた。 「大丈夫ですよ。・・・・・・どんなノヴァリスさんでもノヴァリスさんであることは変わらない。どんな君でも受け止めるつもりだよ」 「・・・ゴーシュさん」 「だって・・・・・・、君は僕が今ここにいる理由だから」 ゴーシュはノヴァリスに慣れない微笑みをくれた。 その笑みをきっかけに、戻った記憶のことを鮮明に話した。 ・・・・・・ 「ヘレネス皇国・・・?」 「はい。私はその第一皇女になります」 ゴーシュは詳細を求めると、ヘレネスはノヴァリスのように同じ人間で、皇帝を中心とした絶対君主制を敷いた国家へと成り上がった、と彼女は言う。ヘレネス皇国は月面から発掘されたフィリア・クォーツという鉱物資源の軍事利用に成功し、地球のものとは比べ物にならないほどのオーバーテクノロジーを手に入れ、経済的、軍事的においても栄華を極めたそうだ。 「フィリア・クォーツは媒介とすることで思いを感応させる・・・。我が国はその性質を軍事利用して、フィリア・ドライブを開発しました」 「この間の戦闘で使ったものか・・・。じゃあ、もしかしてあの《アキレウス》も・・・」 「はい、私の記憶が正しければ、あのパノプリアはヘレネス皇国所属のものだと思います」 「!・・・やっぱり」 ゴーシュはノヴァリスとの会話から、パズルを解くようにピースを繋げていく。 「・・・あまり驚かれないんですね。私もあなた方が戦っているヘレネスだというのに」 「別に気にしないよ。僕はそこまでヘレネスに対して敵対心は強くないし・・・、それに」 ゴーシュは仏頂面から少しだけ口角を上げ、ノヴァリスを見つめる。 「どんな君でも受け止める、って言ったからね」 その時、基地内にブリーフィングの集合を促すアナウンスが流れ、二人は急いで向かった。
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