第三話 皇女の記憶

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「これよりブリーフィングを開始します。各部隊報告を」 ブリーフィングを取り仕切っている女性は、シャルロッテ・エルガー。弱冠26歳でキヴォトスの極東支部における司令官の座に就いている。 「こちらΛ小隊、小隊長のイヴァン・リュボーフィ中尉です」 イヴァンが先日のヘレネスの襲撃の件について、大まかに報告した。 ゴーシュは静かに聞きながら、隣にいるノヴァリスを一瞥し、ここに向かうまでの会話を思い出す。 「ゴーシュさん、このことは他言無用でお願いします。ヘレネスを嫌悪する方もいるかもしれませんので」 「うん、分かってるよ」 「感謝致します。私もまだ死ぬわけにはいきませんから・・・」 「・・・・・・」 (・・・彼女も戦っているんだ。・・・やってやる) ゴーシュは視線を前に戻し、静かに闘志を滾らせた。 「報告ご苦労様でした。ふむ・・・」 エルガーは小隊ごとの報告を聞き終えて、ブリーフィングを総括しようと思いを巡らした。 そして、極都支部の現状を泰然と突きつけた。 「・・・単刀直入に言いますと、状況はあまり良いとは言えませんね。所謂ジリ貧です」 隊員全員が粛々と静聴している。 「しかし!」 エルガーの一声で全体が彼女に意識を向ける。 「悪いことだけではありません。スヴェンソンくん、こちらへ」 「!・・・はい」 ゴーシュは突然名前を呼ばれ驚いたが、上官の指示に従い前に出る。 「彼はこのキヴォトスに新しく所属することとなりました・・・」 エルガーはゴーシュに目を向け、自己紹介を促す。 「ゴーシュ・スヴェンソンです。所属はΛ小隊になります。以後お見知りおきを」 「知っている方もいるかもしれませんが、彼はあの新型パノプリアの専属パイロットです。彼はこちらに軍属する前に、複数のヘレネスを撃墜しています」 その情報に周囲がざわつく。場が落ち着くと再びエルガーは口を開いた。 「新型パノプリアには不明な点が多いですが、整備班曰く一般的なパノプリアと殆ど同じタイプとのことです。・・・きっと彼は十分に即戦力へとなり得るでしょう。皆さん・・・、ここから反撃の狼煙を上げましょう」 拍手喝采が巻き起こり、隊員たちの士気が高まった。
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