10人が本棚に入れています
本棚に追加
「これよりブリーフィングを開始します。各部隊報告を」
ブリーフィングを取り仕切っている女性は、シャルロッテ・エルガー。弱冠26歳でキヴォトスの極東支部における司令官の座に就いている。
「こちらΛ小隊、小隊長のイヴァン・リュボーフィ中尉です」
イヴァンが先日のヘレネスの襲撃の件について、大まかに報告した。
ゴーシュは静かに聞きながら、隣にいるノヴァリスを一瞥し、ここに向かうまでの会話を思い出す。
「ゴーシュさん、このことは他言無用でお願いします。ヘレネスを嫌悪する方もいるかもしれませんので」
「うん、分かってるよ」
「感謝致します。私もまだ死ぬわけにはいきませんから・・・」
「・・・・・・」
(・・・彼女も戦っているんだ。・・・やってやる)
ゴーシュは視線を前に戻し、静かに闘志を滾らせた。
「報告ご苦労様でした。ふむ・・・」
エルガーは小隊ごとの報告を聞き終えて、ブリーフィングを総括しようと思いを巡らした。
そして、極都支部の現状を泰然と突きつけた。
「・・・単刀直入に言いますと、状況はあまり良いとは言えませんね。所謂ジリ貧です」
隊員全員が粛々と静聴している。
「しかし!」
エルガーの一声で全体が彼女に意識を向ける。
「悪いことだけではありません。スヴェンソンくん、こちらへ」
「!・・・はい」
ゴーシュは突然名前を呼ばれ驚いたが、上官の指示に従い前に出る。
「彼はこのキヴォトスに新しく所属することとなりました・・・」
エルガーはゴーシュに目を向け、自己紹介を促す。
「ゴーシュ・スヴェンソンです。所属はΛ小隊になります。以後お見知りおきを」
「知っている方もいるかもしれませんが、彼はあの新型パノプリアの専属パイロットです。彼はこちらに軍属する前に、複数のヘレネスを撃墜しています」
その情報に周囲がざわつく。場が落ち着くと再びエルガーは口を開いた。
「新型パノプリアには不明な点が多いですが、整備班曰く一般的なパノプリアと殆ど同じタイプとのことです。・・・きっと彼は十分に即戦力へとなり得るでしょう。皆さん・・・、ここから反撃の狼煙を上げましょう」
拍手喝采が巻き起こり、隊員たちの士気が高まった。
最初のコメントを投稿しよう!